現代版桃太郎その7
施設の人が赤ん坊を抱きかかえて来た。ほんの数週間会わなかっただけで大分成長したように見えた。妻は小走りで赤ん坊の元に駆け寄り、施設のスタッフさんに抱っこさせてもらってもいいかと聞いていた。赤ん坊を抱く妻の顏は穏やかで、俺の頭の中にあった一抹の不安は遥か彼方にすっ飛んでいった。
その後、帰宅して妻とも話し合い。あの赤ん坊を養子に迎えることにした。
その日は、秋晴れで新しい家族を迎えるのには絶好の日となった。
赤ん坊の為に用意した真新しいチャイルドシートを車に取り付け、乳児院へ向かった。
思ったよりスムーズに赤ん坊を受け取り、施設のスタッフさんたちに見送られながら俺たちは我が家に戻った。
赤ん坊を育てるために必要な物はあらかた用意してあったが、一番大切である名前をまだ決めていなかった。二人で話し合った末、桃から生まれたので【桃太郎】と命名した。