現代版桃太郎 最終

入社から5年が経ち、社内でも一目置かれるようになった僕たち4人は本格的に会社を乗っ取るための行動を始めた。

猿田は既に社長の右腕として活躍しており、聞くところによると鬼は税務署に偽りの申告をしているそうだ。つまり脱税だ。鬼を失脚させるには十分なではあるが、それだけでは済まさない。キジ谷に女子社員でもっとも可愛い子を鬼にあてがわせて不倫させた。もちろん証拠写真も撮らせている。犬井はというと、その従順で真面目な仕事ぶりで重役たちの信頼を得ている。これで役員会議では優位に立てるであろう。

2年後

とうとうこの日がやってきた。鬼退治だ。

貯めに貯めた脱税の資料及び女子社員との不倫写真を役員会議でぶちまけた。

その頃には、僕を始め、犬井、キジ谷、猿田も役員会議に出席できる程の地位を確立させていた。鬼は最初そんなのはねつ造だと喚いていたが、覆せないとわかった途端しおらしくなり、あろうことか僕に頭を下げて、秘密にして欲しいと懇願してきた。いいざまだと思った。僕はそこで全てを話した。お父さんがうつ病になって大変だったこと、うつ病の末僕がこの会社に入社する一週間前に自殺したこと、自殺したお父さんを最初に見つけたのはお母さんで、その光景がショック過ぎて、あんなに素敵だったお母さんは今じゃアルツハイマーで施設で暮らしていること。

ほどなくして、家宅捜索の為税務署が社長室に入って来た。そして、鬼は逮捕されたんだ。

お父さんの墓石の前で僕は事の顛末を話した。お父さんの仇は取ったからね。

めでたしめでたし