ネコウオ珍道中

ネコとサカナの人生探訪。

現代版桃太郎その5

リビングにいくと、赤ん坊と妻が遊んでいた。

「あなたお帰りなさい」

妙に落ち着いている妻を見て、アルツハイマーの線が濃厚になった。


「ちょっと陽子、話をしよう。その子は誰なんだ。どこから連れて来たんだ」

「だからあなた、ラインでも言ったけど、桃から出てきたのよ」


そういって、陽子はだらしなく蓋の開いた段ボール箱指さした。たしかにその段ボールの中にはぎっしり桃が詰まっており、不自然に大きなくぼみが真ん中にあった。恐らくキッチンに放置されている桃が収まっていたのだろう。


昔話じゃあるまいし桃から人は生まれない。俺は妻と誰の子かわからない赤ん坊を一瞥し、途方にくれた。正直この状況をどう治めていいか皆目見当がつかなかった。


その日は妻と赤ん坊がリビングで寝て、俺は一人寝室で寝た。

次の日、有休を取った俺はとりあえずありのままを警察に話し、訝し気な警察官をどうにか説得して、赤ん坊を引き取ってもらった。そしてその足で嫌がる妻を連れて病院で脳の検査をしてもらった。