現代版桃太郎その8
桃太郎はすくすくと成長し、中学生になった頃、俺はうつ病になり、退職を余儀なくされた。定年まで2年という所での退職は俺をそれまで以上に鬱々しい気持ちにさせた。原因は社長によるパワハラだ。社長は社員みんなから「鬼」と呼ばれるほど厳しい人だった。愛ある厳しさなら耐えられた。鬼のそれは人をいたぶる事に快感を得ているような歪んだ厳しさだった。
抗うつ剤を飲み、ソファでTVを見ていることが多くなった。妻はというと俺とは反対に13年前桃太郎がうちに来てからというものの水を得た魚のような状態が今の今まで続いている。懸念された更年期障害は桃太郎のおかげで影を潜め、子供の力というものを痛感した。
桃太郎はとても良い子で俺の今の支えもこの子であると断言できるほど、俺と妻になついてくれている。桃太郎は頭も良く、人望もあり俺の自慢の子だ。だからそこ今の俺の状態が情けなくて涙が出てくる。あの鬼さえいなければと心底思ってしまうのだ。